「ある書籍を読んでいて、刺激を受けることが多くあります。
そして再読したくなったり、関連書籍にあたったり。
こういう瞬間って「楽しいな」と思えます。」
このようなことを過去に自分自身が書き記しています。
最近そういう瞬間に多く出合えます。
出合った瞬間、「しなければいけないこと」より「したいこと」が優先されてしまうのですが…。
この夏休みに多くの本を整理しました。
その時に出てきた雑誌が『授業づくりネットワークNo299 2010年6月号』でした。
特集が「授業づくりの発想」。
著者は藤岡信勝氏。
30年前の1989年に発刊された書籍です。
偶然にも、今から4年前の8月14日にその書籍を手に入れています。fbの思い出機能が教えてくれました。
「古本買って、当時の帯が付いてたら何か嬉しい。」と一言書いています(笑)。
この書との出合いが自分の授業づくりに大きな影響を与えることなど当時は思いもせずに…。
それにしても、同日にこういう出合いがあることを運命的にも感じます。
時間を忘れて再読が始まります。
雑誌特集の中で「二十年以上前の文章だが、未だ色あせていない。というより今もって新鮮である」と佐藤民男氏は述べています。
まったく同感です。
三十年たっても全く色あせていません。
本書の価値は、授業づくりにおける四つのレベルに分けられ、詳細に論じられていることです。「まえがき」には次のように書かれています。
授業づくりにおいて、教師は、まずレベルの異なる次の四つの問題領域を自覚的に区別すべきである。
(1)教育内容(何を教えるか)
(2)教材 (どういう素材を使うか)
(3)教授行為(子どもにどのように働きかけるか)
(4)学習者 (それによって子どもの状態はどうなるか)
その上で、これらの問題領域のそれぞれについて、理論的・実践的に蓄積された知見を学ぶ。新たに構想を練る。多様な発想をつき合わせ、その中から自分独自のスタイルをつくり出す。各レベルがどのように関連しあうかの見通しを立て実践する。このような創造的な過程が授業づくりの仕事なのである。
常に自分の中に染み込まれています。
自覚的にも無自覚的にも。
自分の授業づくりにおいて必ず意識することです。
記録をとる、授業ビデオをみてふり返ることなどは、「教授行為」や「学習者」を意識していることに他なりません。
特に「学習者」です。
「学習者を意識するからこそ、教師は自分の思い込みを正す機会を得ることができる。」と藤岡氏。
正にその通りです。
最終的には子供の姿がすべてを物語ります。
その事実からいつも再スタートです。
再読して新たにおもしろさを感じたのは、各章のはじめにある<道案内>です。
もとになった論稿の執筆時点と当時の藤岡氏の見解との違いが説明されています。
藤岡氏がどのような思考を経て『授業づくりの発想』を構想したのか。
その軌跡をたどりながら読むことがまた大きな学びとなりました。
久津見宣子氏、山本典人氏、有田和正氏の実践をモデル化して比較検証している最終章も実におもしろいです。
何度読んでもおもしろさと学びを発見できる書籍。これからもずっと大切に付き合っていく書籍です。