社会科の教科書を見ていて色々なことを感じます。
例えば、4年生の社会科教科書の単元名には
「住みよいくらしをつくる」
「自然災害からくらしを守る」
「特色ある地域と人々のくらし」
「健康なくらしとまちづくり」
「くらしと電気」
「健康なくらしを守る仕事」
「くらしを支える水」
「わたしたちのくらしと電気」
「わたしたちのくらしとガス」
「くらしのなかに伝わる願い」
と「くらし」という表記がされています。
「生活」ではないのですね。
「くらし」と「生活」の違いを調べてみると、「くらし」は「生き方」などを含めたより広い意味を表していました。
陶芸家の河井寛次郎氏の言葉に「暮らしが仕事、仕事が暮らし。」という言葉があります。
私はこの言葉が大好きです。
氏は常々「美しい仕事、正しい仕事は、美しい暮らし、正しい暮らしから生まれてくる」という想いをもっておられたそうです。
「暮らし」はすべて「生き方」につながっているという捉え方ができます。
また、ある社会科教科書4年生に掲載されている通潤橋のエピソードも心に残ります。
160年前までこの村は、谷に囲まれ水脈を閉ざされ、村の人たちも困り果てていました。
そこで、布田保之助という人物がこの村に水を通すための通潤橋をつくる決心をしたのです。
それから10年、村をあげての人々の知恵と労働能力を集め、努力と苦労の末、通潤橋は完成しました。
その結果、新しく40町歩の田畑が拓かれたのです。
その頃の様子は、今もなお美しい田園風景として残っています。
そのような通潤橋ですが、2016年4月の熊本地震でひび割れなどが生じてしまいました。
6月の大雨では用水に多くの土砂が流れ込み、大きな被害を受けました。
しかし、地域の人々を中心に、通潤橋修復と地域の復興作業が行われました。
教科書の最後にはこのように書かれています。
「橋の修復には、現代的な技術は使われず、布田保之助らが考えた特別なしっくいが使われました。このことが、通潤橋の価値を未来に残すことにつながると考えられているからです」と。
160年以上前に行われた事業は、今も残る地域の人々の自主独立の志と、豊かさを求める自力更生の力につながっているのです。
村を興すには温かな人間関係がなければできません。この村には、過去の想いを引き継ぎ、未来の暮らしへのおもいやりにあふれています。
人の心を豊かにさせる共生の暮らしが存在しているのです。