岩田一彦氏(1990)は、「教科書記述から「隠された問い」を抽出し、抽出された「問い」をどのように組み立てていくかが、授業設計の基本となる」と述べています。
実は、教科書には、明示されていない「問い」が多いです。
限られた教科書のスペースでは、「問い」を含む多くの内容が書き切れないからです。
例えば、以下のような教科書の記述内容を文ごとに分けてみました。
それぞれの文は、次のような問いに対する答として書かれたものとなっています。
①は、全体像を捉える問いになっています。
②③④は、情報通信技術が今どのようになっているのかの問いになっています。
①②③④の「問い」はすべて事実的知識を獲得する「問い」となっています。
それらを土台として⑤「どのようにデータを分析するのか?」という問いを深めるために、「なぜデータを分析するのか?」という問いを作り出すことができます。
教科書の記述から「問い」を見つけ出し、「問い」を網羅し、「問い」の構造と流れを考察することで、概念的知識を獲得できる「なぜ」の「問い」を見つけ出すことができるのです。
明示されていない「問い」が多いことは述べましたが、教科書記述にはこの「なぜ」や「するべきか」という概念等に関わる知識を獲得するための疑問文の明示がない場合が多いのです。
明示されていないので、事実的知識のみを獲得する授業となりやすいのです。
概念等に関わる知識を獲得させるために、隠れている「なぜ」や「するべきか」を抽出していくことが重要なのです。
構成した授業の中に「なぜ」という発問があるかどうか、「なぜ」を発見できたかどうかを確認するだけでも授業の深さは変わってきます。
〈参考文献〉
『社会科教育』No333(1990年2月号)