【子どもにとっての社会科ノート】
子どもにとっての社会科ノートはどのような機能を果たすのでしょうか。
以下の6点が考えられます。
1 記録のためのツール
2 思考を深めるためのツール
3 学びをふり返るためのツール
4 書く力を伸ばすためのツール
5 想いや願いを綴るためのツール
6 友達と交流するためのツール
「ノートは思考の作戦基地だ」という有田和正氏(1996)の有名な言葉があります。
記録をするためのノート機能は確かに大切ですが、思考を深めたり書く力を伸ばしたりといった視点を意識したノートづくりをさせたいものです。
また、ノートを使って友だちと交流する場面をとるなどの機能も考えられます。
ノートを媒体として子ども同士がつながる視点ももっておくことが大切です。
【教師にとっての社会科ノート】
一方、教師にとっての子どもの社会科ノートとはどういったものなのでしょうか。
以下の3点が考えられます。
①学習状況把握のためのツール
②評価するためのツール
・本時、単元での学習把握
・継続して得た概念 比較等の視点
・学習内容と学習方法の獲得
③子ども同士をつなげるためのツール
子どものノートをチェックすることで、子ども一人一人の学習状況を把握することができます。
子どもの「つまずき」も発見することができます。
多くの子が「つまずき」を感じているとき、それは間違いなく授業のどこかに問題があったことが考えられます。
つまり、子どもたちのノートは教師の授業のバロメータでもあります。
【どこに焦点をあててノートをみるのか】
「形成的評価」の大切さは以前に述べています。
毎時間のノートチェックはその機能を大いに果たしてくれるでしょう。
ノートは子どもの表現が見られるものです。
子どもが表現したことを教師が認め、評価することで次の意欲につながります。
しかし、ノートのどこを見たらいいのか、どう評価したらいいのかわからない、という教師の「つまずき」も見られます。
それに、多くの教科指導がある中、毎時間社会科ノートをチェックするということは現実的ではないという声があがりそうです。
ですから、ノートのどこに焦点をあてて見ていくのかが大切になります。
子どもたちのノートのどこに焦点をあてて見るかというと、
「概念的知識の獲得ができたか」
「視点を獲得できたか」
の2つです。
それは、社会科のねらいとしていることにつながるからです。
「深い学び」を実現したり、ものの見方を豊かにしたりすることにつながるからです。
ノートの中でそれらが最も表れるのは「ふり返り」の部分です。
子どもの「ふり返り」を見てみましょう。
左側は、日清・日露戦争を国家側の見方だけではなく、国民側の見方としても捉えています。
多角的な視点で見ていることが十分に評価できます。
右側は、「焼津港には多くの魚を加工したり冷凍保存したりする工夫がある」という知識の獲得がかかれています。
さらに、自分の発言が学びを広げることができた喜びと、授業をすることで得ることができた気づきが書かれています。
自分の気持ちや感情が素直に書けることは、その子ならではのノートづくりとなります。「その子らしさ」が表れるのです。
【どのように評価するのか】
評価の仕方は様々です。教師が自分で評価の観点を定めておく必要があります。例えば、
・本時のねらい(獲得させたい概念的知識)が書けていればA。視点の獲得や自分の考え等も書けていればAA、AAA…など増えていく。
・よい気づきや新たな視点には、赤ペンで直線や波線を引いたり〇で囲んだりする。
・つまずきがみられればコメントを書く。もしくはその子と対話する。
このような評価の基準と方法を子どもたちに伝えておくことが大切です。
それに応じて子どもたちも努力しようとします。
ノートには教師の授業観が大きく表れます。
教師が授業において何を大切にしているのかで、子どものノートが大きく変わるのです。
【参考文献】