社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1224 3.学習活動の質的変化

子どもの「複線型の学習」を支えるICT活用と教師の役割

3.学習活動の質的変化

 

  ここで、Bについて見てみる。これが学習 活動の中で行われる活用となる。 社会科は、子どもたちが社会的な見方・考 え方2を働かせ、よりよく問題解決的な学習を行えるようにすることを目標とする。

 

図3 問題解決的な学習の流れ

 
  問題解決的な学習では、
図3のように「問題をつかむ活動」「問題を調べる活動」「問 題についてまとめふり返る活動」「学習した ことをいかす活動」の4つの活動が考えられ る。 子どもたちがそれぞれの活動場面で効果的 にICTを活用することにより、よりよく社会 的な見方・考え方を働かせながら問題解決する力をつけていくための学習活動の質的な向 上が期待できる。 例えば、「問題をつかむ」場面では、学習 問題を立てた後、一人ひとりが学習問題に対 する予想をし、出された予想を分類していく。 黒板を使って全体で行っていた分類作業を自 分の手元で一人ひとりができるようになる。 比較・分類という思考活動を全員が行う場を 保障することができる。 また、「調べる」場面では、自分の予想や 仮説についてインターネットを使いながら 様々なサイトから自分のタイミングで調べる ことができる。調べたことを話し合う活動で も、一人一台端末は効果を発揮する。今まで は発言力が強い子どもや音声言語でのやりと りが得意な子どもが中心になって話し合いが 進むことが多かった。しかし、端末を活用す ることによって、図4のように全員の子ども の考えをロイロ上で共有し、可視化された考 えをもとに、より多様な話し合いができるようになった。

図4 提出された子どもたちの考え(震災遺構は解体するべきか保存するべきか?)

 

 上記のように、ICTを活用することで学習 活動が充実することは十分に分かるが、学習 活動が充実するだけでは不十分である。授業 は、学習目標を達成することが重要である。 学習目標を達成するために学習活動があり、 学習活動の充実が、学習目標の達成につなが る。この二つのつながりがなくなった時に、 学習目標をもたない学習活動、つまり、手段 の目的化が生じる。

図5  5年生社会科「高い土地のくらし」に おける学習目標と学習活動

 

   図5のような5年生社会科を例にすると、 群馬県嬬恋村3(学習内容)を扱い、資料や 動画等を使用しながら嬬恋村について調べる 活動(学習活動)を通して、地形条件を生か した人々のくらしや産業の工夫について理解 する(学習目標)ことを目指す。ここで大切 なことは、嬬恋村について知ることだけでは なく、高い土地に住む人々が地形条件に合わ せてくらしや産業の工夫をしていることを理 解することである。より一般的な意味理解が 求められる。しかし、前述したように、学習 目標と学習内容がつながっていなければ、子どもたちはただ嬬恋村(学習内容)を調べて 個別的な理解のみにとどまってしまう可能性もある。 子どもたちは様々な活動の中で、活動の質 を高める効果的なICTの活用を行っている。 しかし、それが目標達成につながらなければ、 教科教育の活動として十分でない。子どもの ICT活用とは、あくまでも教科等の目標を達 成するために学習活動の質をあげるものだと いうことを忘れてはいけない。

 

〈註〉

2「社会的事象を、位置や空間的な広がり、時期や 時間の経過、事象や人々の相互関係に着目して捉 え、比較・分類したり総合したり、地域の人々や 国民の生活と関連付けたりすること」と『小学校 学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編』の中で説明されている。

3 令和2年発行の日本文教出版の『小学社会5年』 の中で取り扱われている事例地。低地の岐阜県海 津市と高地の群馬県嬬恋村のどちらかの事例地を 選択して学習するようになっている。

 

〈参考文献〉

宗實直樹,椎井慎太郎(2022)『GIGAスクール構想 で変える!1人1台端末時代の社会授業づくり』 明治図書出版