本書は素材をどのように教材にするのかという「教材化」はもちろん、あまり語られてこなかったどのように素材を見つけるかという「素材発掘」にも焦点をあてています。
社会科教材に関する理論と歴史、素材発掘と教材化についての具体が記されています。
以下、本書の「おわりに」より一部抜粋いたします。
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「社会科は教材で勝負」
このことをずっと思ってきました。
そこには教師の授業観、子ども観、人生観、すべてが現れます。
教材づくりにはそれぞれのストーリーがあり、それぞれの文脈の中で息づきます。
まさにそのすべてが味わい深く豊かににじみ出てくるものです。
「望ましい教育が行われるためには、一人ひとりの子どもにとって、かけがえのない教材とのめぐりあいが必要である。
その子の現在もっている社会の見方考え方をゆさぶり、良い高い思考体制へ導くための素材が教材である。
教育は、本来、その子のためのものであり、教材もその子のためのものでなければならない。その子が、体当たりしてかかわりをもってこそ、事物事象も、その子にとって教材となり得るのである。
ところが、一般には、具体的な、この子をぬきにして、教材がひとり歩きしやすい。教育は「教材を教えることだ」「教科書を教えることだ」と考えられやすい。だから、教材といわれているものをあてがえば、それで「教えた」と考えてしまう。子どもが落ちこぼれるはずである。
病人の治療にとってだいじなのは、その病人にふさわしい治療であり、病人に即した薬である。薬のために病人をつくるのではない。これと同じで、教育においても、教材は、もともと、その子の学習を主体にして考えられなければならないものである。
「教材を教える」というより「教材で教える」、つまり「教材とめぐり合わせ、その子に、自らの体制をたて直させ、考えを発展させる」のである。」(『若い社会科の先生に』(1983)より)
教材はだれのためのものか。
そう、子どものため。
「その子」のためのものです。
それを忘れてはいけないと強く思います。
本書がみなさんのオリジナル教材をつくるヒントとなり、教材を発掘するおもしろさを感じていただけるきっかけになれば幸いです。
少なくとも本書に関わった6人は、「教材」の魅力にとりつかれています。
みなさんが教材に魅せられ、子どもたちが教材に没頭し、追究していく姿を願ってやみません。
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◼️東洋館出版社HP
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