社会のタネ

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257 社会科における子どもの「つまずき」とは(「つまずき」シリーズ2)

 社会科における「つまずき」はどのようなところで見られるのでしょうか。大きく3つに分けてみます。

①   興味関心のつまずき

②   思考活動のつまずき

③   認識のつまずき

です。

一つずつ説明していきます。

 

〈興味関心のつまずき〉

 「社会科は暗記ばかりしていていもしろくないです」

「先生、社会科って何か言葉だけがふわふわと中に浮いている感じで何が何だかよくわかりません」

私が初任のころ、子どもから言われた言葉です。

 自分たちの身の周りにある社会的事象を扱う身近なはずの教科が、子どもたちにとって身近に感じられない学習内容になっていることがあります。

難しい言葉だけが先立ち、実感が伴わず、「覚えなければいけない」「暗記しなければいけない」という状態になってしまっているのでしょう。

学習内容がおもしろく感じられないという状態です。

おもしろくないから意欲的に学習に取り組めず、わからなくなります。わからないからまたおもしろくなくなります。

正に負のスパイラルに陥っている状態です。

 興味関心でのつまずきがあるために、学習に対する無効力感を子どもたちに味わわせてしまってはいけません。

初歩的な「つまずき」でありますが、学ぶ意欲に関わる慎重に扱うべき「つまずき」です。

 

②〈思考活動のつまずき〉

 今回の小学校指導要領(平成29年告示)解説 社会編では、以下のように記されています。

小学校社会科においては、「社会的事象を、位置や空間的な広がり、時期や時間の経過、事象や人々の相互関係などに着目して捉え、比較・分類したり総合したり、地域の人々や国民の生活と関連付けたりすること」を「社会的事象の見方・考え方」として整理し、(以下略)※下線は宗實

「比較・分類したり総合したり、地域の人々や国民の生活と関連付けたりすること」はすべて思考活動です。

 山口康助氏(1970)は、社会的思考の因子を5つに分類しています。

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上の表のように「関連思考」「比較思考」「条件思考」「因果思考」「発展思考」の5つです。

ここでは一つひとつを詳しくは述べません。

しかし、これらの思考因子は、先述の学習指導要領と重なる部分があります。

それぞれの思考にそれぞれの特徴があります。

例えば、全体と部分のつながりを考える時につまずきを感じる子、条件を取り出して一つひとつを分類していくときにつまずく子など、様々です。

 

 庄司和晃氏(1978)は、思考の様式を「のぼる」「おりる」と表現し、鈴木正気氏(1983)は、子どもを日常の世界から科学の世界へわたらせる過程を「わたり」と表現しています。

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 そこでは様々な思考活動が行われます。

具体化するための演繹的思考や抽象化するための帰納的思考です。

特に、具体である日常世界から抽象である科学の世界にわたる帰納的思考の部分でつまずきを感じている子は多いようです。

このように見ても思考活動はたくさんあります。

数多くの思考活動が行われるときに「つまずき」を感じてしまう子もいるでしょう。

 

③〈認識のつまずき〉

「認識」は、主として思考と知識とから成り立ち、直接に目で見ることはできません。

目で見えないので捉えにくいのです。

また、「社会認識」とは、社会の事物・事象の本質を客観的に把握することです。

物事を深く、客観的に把握することは容易なことではありません。

国や地域の範囲が大きく、複雑に絡み合った関係があり、原因結果がつかみにくいのが社会認識です。

さらに、社会科の認識は、時間的認識、空間的認識、関係的認識に分けることができます。

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それぞれの認識に特有の認識形成の仕方があり、その過程での「つまずき」が考えられます。

例えば、時間認識を形成するには、長い歴史の時間を、きわめて短い時間としての相対的に受けとめることからくるつまずきが考えられます。

また、空間認識は、直接経験ができにくく、間接的に抽象的な思考が働くことによるつまずきが考えられます。