子どもたちの興味関心に対する「つまずき」を捉える時に、「身近になる」ということを考えることが大切です。
子どもにとって「身近」とはどういうことでしょうか。
社会的事象を自分ごととして捉えるときに、「身近」になるのではないでしょうか。
しかし、社会科の授業で取り上げられる社会的事象のほとんどは、子どもたちとかかわりの薄いものばかりです。
農家や工場などの仕事や水産業や林業などの産業、政治のことなどすべて大人の社会だからです。
子どもたちが身近に感じること自体、難しいことです。
さらに、前に述べたように、科学的認識を得るためには、日常の世界から科学の世界へとわたらせなければいけません。
学習することが自分にとって遠い存在だと、子どもたちが興味関心を抱くことすら難しいでしょう。
社会的事象を自分ごととして捉えさせなければいけません。
「自分ごととして捉える」ということは、
① 社会的事象と自分の生活との関わりを意識したとき ② 学習に対する問題意識をもったとき ③ 人の働きに共感し、人の営みが見えたとき |
と考えられます。
①の学習対象で言えば、4年生の「ゴミのゆくえ」や、「水はどこからどこへ」の小単元などが考えられます。
身近にあれども、なかなか目に入っていないものや関心が寄せられていないものが身の周りには数多く存在しています。
例えば、4年生「ごみのゆくえ」の学習で考えてみましょう。
子どもたちははじめ、ゴミのことなど興味がありません。捨ててどこかへ行ってしまうものというぐらいの捉え方です。
そこで、単元の導入場面で、教室内に黒い袋を持ち込みます。
子どもたちは何が入っているのか興味津々です。
中身はごみ。以下のようなやり取りを行います。
T「何が入っていると思いますか?」
C「わからない」C「ゴミだ」
T「正解です。どんなゴミが入っていると思いますか?」
C「紙」C「ティッシュ」C「段ボール」…。
C「どこのごみですか?」
T「これは、職員室のゴミです。教員室にはどんなゴミがあると思いますか?」
予想をさせます。黒ゴミ袋から一つずつ順に出して子どもたちに見せます。
出す度に悲鳴が上がります。
どんなごみが出てきたか板書していきます。
保健室や教室のごみも同様に見せていきます。
学校ではたくさんのゴミが出ること、場所によって特徴的なごみが出ることがわかります。
学校以外では、どんな場所でどんなごみが出るかを問い、関心を広げていきます。
T「では、家のごみはどんなものが出るのかを調べてこよう」ということで、1時間目を終えます。
次の時間は調べてきたことを可能な範囲で共有します。
以下のようなものに分類できます。
○台所…食べ物に関係、食べられない物
○洗面所…体に関係、つつむ物
○自分の部屋…勉強に関係、紙関係、燃えるもの
○みんなの部屋…古くなったもの、飲食に関係
T「たくさんごみが出ていいですね。たくさん出たごみをみなさんは大切に家にもっているんですよね?」とゆさぶりを入れます。
C「捨てますよ!」
T「え、どこに?」
C「ゴミ捨て場」
T「ゴミ捨て場にためているんだね?」
C「いや、なくなっているよ…。あれ、なんでなくなるんだろう?」
C「ごみを集める車が持って行っているよ」
C「どこに持って行っているんだろう?」
といった感じで、自分たちが生活の中で当たり前に出しているごみはどうなっていくのだろう?と関心をもちはじめるのです。
子どもたちの生活と社会的事象との距離を少しずつ縮めていくのです。
学習を進めることで、「ごみを処理する事業は、生活環境の維持と向上のため、衛生的な処理や資源の有効利用ができるよう進められている」という概念的知識を獲得することができます。
その後、ごみの減量やリサイクルなど、自分たちにできることを考える活動がよく行われます。
しかし、形式的に他人ごとのように考える場合も少なくありません。
そこで、子どもたちにとって身近な問題であり、現実的な社会問題でもある「食品ロス問題」を取り上げます。
授業の詳細はここでは述べませんが、食品ロスを学習することで、実は自分たちが食品を廃棄している量が非常に多いことに気がつきます。
そして、食品ロスが経済面や環境面など、様々な面において影響を与えていることを捉えさせ、国民が抱えている切実な課題であることに気づかせます。
それらを認識した上で、自分にどのような行動ができるかを考えさせる展開にしました。
日常生活の中での自分たちの行動が、社会問題につながるということを実感させています。