エピソード【常識破りの日本初!芝居の脚本に署名?】
芝居の脚本家は、書いた脚本に名を記さないというのが当時の常識でした。
舞台に上がる役者や三味線弾きよりも給料も少なく、舞台の小道具の準備なども手伝うのが当たり前でした。
しかし、「近松作」とされる作品は数多く残っています。
それは、近松が芝居の脚本に署名をしたからなのです。
日本ではじめてのことでした。
芝居事に関わって生きていこうとする近松の自負と決意の強さが感じられるエピソードです。
近松の作品の中でも「曾根崎心中」は大ヒットしました。
近松の「心中物」をまねして、世間では心中が流行しました。
京都と大阪だけでも半年間で900件あったと言われています。
心中が派生すると、すぐに脚本化され、舞台で上演されました。
近松を代表とする浄瑠璃作家は、心中ブームを追いかけ、それを上演するために脚本執筆に励んでいたのです。
「近松門左衛門の書く話ならおもしろいはず!」と、脚本家の名前で集客ができるほどの人気作家になったのが近松でした。
演劇の世界で裏方だった脚本家の立場をよくした人でもあるのです。
【近松門左衛門にかかわる授業】
〈ポイント〉
近松門左衛門が生み出した歌舞伎や人形浄瑠璃の作品を調べることを通して、町人の経済力が向上し、町人文化が発達したことを理解できるようにします。
〈近松作品の人気の秘密を探る〉
①歌舞伎の芝居小屋を提示する
教科書に掲載されている歌舞伎の芝居小屋の光景を提示します。
じっくりと調べさせます。
武士や町人がいっしょに見物したり、女性が多く見物したりしていることに着目させます。
身分制度があった江戸時代の時のイメージが覆ります。
②近松門左衛門について調べる
歌舞伎の作者として有名な近松門左衛門のエピソードを紹介します。
その後に、「近松門左衛門はどのような作品をつくったのだろう?」と問い、調べさせます。
③近松作品の人気の理由を考えさせる
「なぜ近松の作品は多くの人に喜ばれたのか?」と問います。
近松の作品の内容をもとに考えさせます。
「義理と人情が主題で、当時の人々の心をつかんだんだね」
「当時の話題にぴったりの話の内容だったんだ」
などと答えます。
近松が描く作品は、「世間の義理」のために犠牲にしなければならない悲しい運命を描き、人々の共感を呼んだことを捉えさせます。
〈参考文献〉
歴史人物エピソードからつくる社会科授業42+α (社会科授業サポートBOOKS)