社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1023 教材化の具体

どのように教材化しているのか、具体例を挙げます。
ことのはじまりは、一冊の小説との出合いでした。森沢明夫氏の『かたつむりがやってくる たまちゃんのおつかい便』。「買い物弱者」をテーマにした心温まる感動作品です。この「買い物弱者」、つまり高齢化問題は、現在日本が抱える社会問題の一つです。「これを扱う教材ができないかなぁ」と思いました。それと、「これはきっとハートフルな教材なるぞ!」と直感しました。そこで色々と調べてみると、移動スーパーの「とくし丸」さんの存在を知りました。そこから話は早いです。とくし丸さんの会社にメールをし、取材のお願いをしました。関西にもとくし丸を扱うスーパーさんがあるということで紹介していただきました。(関西スーパーさん)。取材を快く引き受けてくださり、「関西スーパーとくし丸3号」の助手席に乗せていただき1日密着取材をさせていただきました。
 関西スーパーとくし丸3号の村山かおりさんのお客さんとのやりとりや、仕事に対する思い、お客さんに対する愛情、関わる人々への感謝、全てが素敵でした。具体例を挙げるときりがありませんが、お客さんから聞こえる「ありがとうねぇ」「ほんまに助かるんや」という生の声の多さがすべてを物語っていました。人とふれ合い、心を通じ合わせる仕事の素晴らしさを再確認させていただきました。村山さんは「めっちゃ楽しいですよ!」「この仕事は「愛」で成り立っています」とおっしゃっていました。本当にその通り。「感謝」と「敬意」で成り立っていることを目の当たりにしました。取材させていただくことで、私自身が大きな学びをいただきました。村山さんのとくし丸を通して、人とのふれ合いや仕事の楽しさ、素晴らしさを子どもたちに感じさせたいと思いました。この素敵な素材を必ず教材にしようと思いました。
現時点(2020年3月)ではまだあいまいですが、具体的にどのようにして教材化していこうかと考えていることを述べていきます。3年生「店で働く人と仕事」。単元目標は「地域に見られる販売の仕事について、消費者の願い、販売の仕方、他地域や外国との関わりなどに着目し、それらの仕事に見られる工夫を考え表現することを通して、販売の仕事は、消費者の多様な願いを踏まえ売り上げを高めるよう、工夫して行われていることを理解できるようにすること」です。地域のスーパーマーケットを事例として扱います。単元の問いを「スーパーマーケットの人は、売り上げを高めるためにどのような工夫をしているのだろう」とし、追究させていきます。スーパーマーケットの見学などを通して、品物の並べ方や掲示の工夫、安さや新鮮さを伝える工夫などに気付くようにさせます。また、販売者の視点だけでなく、消費者の視点から多角的に考えさせることで、消費者の願いとも関連付けて考えさせるようにします。小単元の後半に、商店街やコンビニと比較させることで、販売の仕事に対する工夫について考えを深めさせます。そして最後に、とくし丸さんを扱いたいと思っています。単元を通してお店を扱ってきましたので、「移動販売はお店ですか?」と問うことで、お店に対する概念を確認させることからはじめてもいいかもしれません。村山さんの仕事を通じて、人とのふれあいの大切さ、地域のコミュニティを作ることの大切さを感じさせます。さらに現代社会が抱えている「買い物弱者」の問題にもふれさせます。この高齢化問題については3年生の子どもたちには考えさせることが難しい問題です。しかし、4年生の伝統工芸や年中行事、5年生の産業での高齢化に伴う後継者不足の問題などを学習したときにつなげて考えることができます。このように捉えることが、単元の目標をさらに豊かにしてくれるのです。
さらにもう一つの構想もあります。実は、とくし丸さんの販売も、商品の並べ方、安さや新鮮さを伝える工夫、消費者のニーズに応える工夫が十分にされています。これらは、本小単元で捉えさせたい事項です。ですから、とくし丸さんを中心教材として単元全体を構想することも考えられます。
移動スーパーはどこへ行くと思いますか?」
「なぜ移動スーパーだと思いますか?」
「とくし丸はどのようにして販売しているのだろう?」
「なぜお年寄りの買い物が多いと思いますか?」
「毎日違うものを積み込むのはなぜだと思いますか?」
「なぜバナナはずっと固定位置にしていると思いますか?」
「お惣菜ボックスは、なぜ引き出しにしていると思いますか?」
「今日の販売にきゅうりが多いのは、なぜだと思いますか?」
「村山さんは〇〇の商品を袋に入れています。なぜだと思いますか?」
「なぜ黒いかごとピンクのかごに分かれていると思いますか?
「半分サイズの商品が多いのはなぜだと思いますか?」
様々な問いが思いつきます。考えられる問いを取捨選択し、組み立てていくことで、単元の学習を大まかに構想することができます。それらの問いに子どもたちが答えることで、様々な販売の工夫を捉えさせることができます。そこに村山さんの想いや願いを入れていくことで、血の通った学習にすることができます。
このような感じで色々と迷いながら、そして楽しみながら教材づくりを行っているのです。
早く子どもたちと授業がしたくなります。