社会のタネ

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802 自己学習について

 自ら主体的に学ぼうとする自己学習力が必要となります。

自己学習力は、個人が問いをもち、個人の学習方法で追究していく力のことです。

 

北俊夫(1996)は、

「いまや学校教育に求められていることは、学校での学習を主体的に学ぶだけでなく、一人の人間として自らの問題意識や興味・関心などにもとづいて、生涯にわたって学び続ける力(具体的には、一生学び続ける意欲、態度、能力。すなわち、生涯学習力とか自己学習力と言われるもの)の基礎を育てることである。」

と述べています。

 

高山次嘉(1996)は、

現代社会において人並みに生活をするために、生涯にわたって自己学習を続けなければならないとすれば、学校は雑多な知識を教え込むよりも、自己学習の能力を育てることにもっと力を致すべきである。(途中省略)もっと学習方法、能力、調べ方や考え方、さらに根源的には学ぼうとする意欲や態度を育てるように学校を自己学習の場として改造しなければならない」

と指摘しています。

 

 当時、「新学力観」というものが打ち出されていました。

新学力観(しんがくりょくかん)とは、臨時教育審議会答申や1987年の教育課程審議会答申で提起され、1989年改定の学習指導要領に採用された学力観のことです。

社会の急速な変化が既習内容をすぐに古いものにしてしまう」

という問題意識から、変化に対応する諸能力を重視するという考え方が提起されました。

社会的な背景として、社会の急激な変化が挙げられます。

 

 また、1996年に文部省(現在の文部科学省)の中央教育審議会中教審)が「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」という諮問に対する第1次答申の中で、

我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力など自己教育力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を、[生きる力]と称することとし、知、徳、体、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。(下線筆者)

と述べたことから、教育の新たな目的の一つとして上げられるようになりました。

 

 どの時代も

「社会の急激な変化」

「変化の激しいこれからの社会」

といった言葉が見られます。

 

どの時代でも言われてきたことではありますが、これから迎える社会ほど「急激な変化」、「先が見えない社会」を迎えることはないのではないでしょうか。

そう考えれば、より、自己学習力や自己調整力というものが必要になってくるということは言うまでもありません。

 

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〈参考文献〉
北俊夫(1996)『「生きる力」を育てる社会科授業』明治図書
高山次嘉(1996)『社会科教育の回生』教育出版