社会のタネ

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1225 4.学習形態の変化

子どもの「複線型の学習」を支えるICT活用と教師の役割

4.学習形態の変化

  子どもたちが一人一台端末を所持し、前述 したようなICT活用を進めると、従来の「単 線型の学習」から「複線型の学習」へと変化 する。「複線型の学習」について、北(1993) は、次のように述べる。

 

(子ども一人ひとりを生かす)ことを実 現するためには、従来の授業に対する固定 観念にとらわれず、子ども自らの考えや問 題意識に基づいて、自らの考えや学習活動 をつくり出していけるように、教材や学習 活動を子どもが選択する場や機会を設ける ことが大切である。このことは、複線型の 学習を展開することである(太字、下線は 筆者)

 

 「複線型の学習」とは、「複線」という意 味が示す通り、子どもの学習における学習内 容や学習活動が同時に2つ以上並行している 学習のことである。学習問題や教材、学習方 法などを画一的にせず、複数用意することが 考えられる。子どもの意欲、思いや願いに応 え、多様な学び方に対応する学習形態である。 1990年代までにも「一人一人の子どもを大切 にする」や「個に応じた指導」という名のもとに実践されていたが、指導レベルでの具体 的な工夫が必ずしも明確だったとはいえない。 従来の授業は、授業を構成する要素(目標、 内容、教材、活動、評価、学習環境など)の すべてが画一的で、教員主導の「単線型の学 習活動」が中心だった。教員の敷いたレール の上を、すべての子どもが一斉に走り出すと いうイメージである(図6〈A〉)。

図6 学習形態の変化

 

それでは子どもたちの学習意欲や問題解決 能力、社会的なものの見方や考え方が育まれ ないという指摘から、一人ひとりの子どもの 学びに視点をあてるという教員の授業観や子 ども観の転換が迫られた。そこで「学習の複 線化」と呼ばれるような実践が増えてきたの が1990年代だった。 北は、「学習の複線化」について、次のよ うに定義している。

 

「学習の複線化」とは、子ども一人一 人の多様な思いや願いに柔軟に応えられ るよう、学習を構成する学習問題や教材、 学習方法、学習活動、学習環境などそれ ぞれにおいて、教員が複数のメニューを 用意したり、子ども自身が自らの学習計 画を立てる場をつくったりするなどして、子どもの多様な学び方に対応できるよう にすることである。

 

  「学習の複線化」は、子どもたちが学習す る要素が複線化、多様化しているということ である。一人ひとりの子どもは、多様な学習 活動や学習方法などから自己選択し、自己決 定しながら活動していく。そういう意味で、 「学習の複線化」とは、一人ひとりが問題解 決に向けての目的意識をもち、教材や活動な どを選択しながら学習に取り組むことだとい える。つまり、「子どもによる『選択』を取 り入れた学習」と言い換えることができる。 一人ひとりが選択を取り入れた学習を行うの で、その学びのあり方は多種多様な形になる。 30人いれば30人の学び方が成立していくこと になる。

 

〈参考文献〉

北俊夫 編著(1993)『社会科〈関心・意欲・態度〉 の評価技法』明治図書出版

宗實直樹(2023)『社会科個別最適な学び授業デザ イン』明治図書出版