社会のタネ

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1223 2.子どものICT活用へ

子どもの「複線型の学習」を支えるICT活用と教師の役割

2.子どものICT活用へ

子どもたちを誰一人取り残さず、創造性や 可能性を拡張する教育の実現のために欠かせ ないのは、教員のICT活用から子どものICT 活用を考えることである。 教員のICT活用では、実物投影機で資料を 拡大して子どもに提示するなど、一斉授業の 中での活用が中心となる。ICTの活用によっ て確かに教員の教育技術の質を高める支援に はなるが、それが子どもの学び方に影響を与 えることは少ない。教員のICT活用だけでな く、子どものICT活用へ拡大していく必要が ある。 では、子どものICT活用とはどのようなも のか見ていく。高橋(2022)は、子どもによ るICT活用を次のように分類している。

 

A 個別の知識等の反復・習得のための AIドリルや動画等の活用

B 高次な資質・能力の育成を意図した複 合的で総合的な学習活動を支援する ための活用

C 情報共有や資料配付など資質・能力の 育成に間接的に寄与する活用

 

Aは想像しやすい。筆者の学級でも YouTubeNHK for School等のサイトを見 ながら学習している子どもは多い。筆者が6 年生を担任していた際は、子どもたちが NHK for Schoolで歴史動画を視聴した後に、 内容について価値判断をし、話し合う活動を 行った。

Bについては後述する。

図1 ロイロの資料箱

 

Cは情報共有や資料配布を行う活用である。 例えば、学習支援アプリ1「ロイロノート」 (以下、ロイロ)の中には、「資料箱」とい う、様々なデジタル・データを保管できる場 所がある。図1のように教員が「資料箱」の 中に様々なデジタル・データを入れておく。 子どもが必要に応じてそのデジタル・データ を選択し、自分の端末画面に取り込む。また、 教員が授業の板書写真を撮り、それを子どもたちの端末に送り、子どもたちは自主的な学習などに活用できる。家庭等でその板書写真を見ながら学習をまとめてくる子どもも出てくる。このように、自分で場所とタイミングを選択し、自分の意図で子どもたちが活用できるよさがある。

図2 二軸での活用

 

これらAとCの活用は、授業内での活用も 考えられるが、授業外での活用に大きな意味 が感じられる。これは、中川(2021)が図2 で示したマトリクスの2 3の領域にあたる。 子どもたちの資質・能力を伸ばすための活用 であることを考えれば、この日常的な活用が 重要になることは明白である。子どもの効果 的な活用は突然できるようになるものではな い。回数を重ねるなどの量的確保と使用する 段階を踏みながら活用するなどの質的変化を 経て、徐々に活用できるようになるものである。

 

〈註〉

1 本校ではロイロノートを使用。ロイロノートとは、 株式会社 LoiLo(ロイロ)が提供しているタブレ ット用授業支援アプリのこと。

〈参考文献〉

髙橋純(2022)『学び続ける力と問題解決―シンキ ング・レンズ、シンキング・サイクル、そして探 究へ』東洋館出版社

中川一史,赤堀侃司(2021)『GIGAスクール時代の 学びを拓く! PC1人1台授業スタートブック』ぎ ょうせい