教材発掘やフィールドワークについて考える際に読み返す本があります。
小田実氏の『人びとはみんな同行者』(1978)です。
「ホテルに着いて、荷物をおいたらぼくは、どんな時間でも、たとえ夜中でも、一遍ホテルの外へでてひとまわりしないと落ち着かない。自分の位置がどの辺にあるかを確認したくなる。地図の上では、自分がどこにいるかわかっていても、地図というのは紙きれにすぎないから、地図上の位置というのも頭の中だけの架空のものだ。それを自分のものにするには現場を自分の足で歩いてみなければわからない。」
自分の足で歩くことの重要さを主張し、そのことを「地図をつくる旅」と言っています。
素敵な表現です。
本書の中には、旅のことだけではなく、他者との関わりや自己再発見、発想法等についても記されています。
氏の観察力や洞察力には目を見張るものがあり、他者への敬意、異質を受け入れる寛容さ、常に自分をふり返る謙虚さ等が随所に現れている書です。
氏は本書の最後の頁に、
「ある日、あるときーその『ある日』は数日にも及べば、『あるとき』も数十時間に及んだが、私は若い人たちといっしょに時間をすごし、思いのたけのいくつかを語った。これがこの本だ。」
と記して本書を閉じています。
若い人だけでなく、多くの人に読んでもらいたい書です。
ちなみに本書は、僕が旅先で「宿周辺散策」をするようになったきっかけの書です()