社会のタネ

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1354 教材化の方法

どのように教材化していくかという方法論について説明します。

藤岡信勝氏は著書『教材づくりの発想』の中で、教材開発の方法を「①上からの道」「②下からの道」と表現しています。

簡単に説明すると、「①上からの道」は、「教育内容」から「素材」へと下降する道筋のことです。教育内容に含まれる目的を踏まえ、科学的な法則や獲得させたい概念的知識を分析します。それに関係する様々な事象の中から子どもの興味や関心に結びつく素材を選び出し、構成していく方法です。組織的・系統的な方法なオーソドックスな方法で、「教育内容の教材化」と言えます。

これに対し「②下からの道」は、「素材」から「教育内容」へと進む道筋のことです。日常生活の中で、子どもの興味や関心を引きそうな素材に出合うことがあります。出合った素材のおもしろさを分析し、教育内容と結びつけて価値を見出し構成していく方法です。非組織的な方法で、「素材の教材化」と言えます。本書で述べた「教材発掘」は下からの道にあたります。

ある若手教員と話をしていたとき、「「上からの道」と「下からの道」、どっちの方がやりやすい?」と訊くと「私は「上からの道」です。そもそもの範囲が限定されている分、やりやすいです」と答えました。納得です。「下からの道」は、非組織的な方法であるがゆえに何から手を付けていいのかがわかりにくく、教材化することも難しいです。「下からの道」で教材化するには、どの教育内容と結びつくのか直感的に感じる必要があるかもしれません。そういった意味では、すべての学年のすべての単元を俯瞰して把握しておく必要があるので、さらに難しさを感じてしまいます。しかし、授業に豊かさを求めるにあたって、「下からの道」で教材化を図ることは、必要な方法であると思います。ただ、「上からの道」と「下からの道」、これらはどちら一方にするということではなく、往還してつくられていくことが現実的です。授業者のタイプや周りの環境によっても大きく変わってきます。