【「教材準備」とは?】
「教材」と聞くと、教科書や地図帳、資料集などが思い浮かびます。
特定の教育内容に対する手段的位置を占める素材を教材とみなします。
『社会科教育用語辞典』(教育出版)には、次のように定義されています。
特定の教育内容に対する手段的位置を占める素材を教材とみなすのである。
つまり、教師が教えようとする概念や知識、法則を子どもに獲得させるための手段が「教材」と言えます。
そう考えれば、教師の口頭の説明や板書なども、立派な教材となります。
しかし、これでは規模が大きすぎます。
優先順位を考え、絞る必要があります。
ここでは、「「問い」と「答え」の準備」に絞ります。
「問い」と「答え」の準備が整えば、単元の指導計画(単元をどのような流れで行うのかを計画したもの)も明確になるからです。
【「問い」と「答え」とは?】
「問い」は、学習の方向を導くものです。
つまり、「問い」をもつことが学習の「スタート」となります。
「問い」は、教師の発する「発問」や子どもの「疑問」、子どもと共につくる「学習問題」等幅広く分けられます。
ここでは、学習内容を決定することにつながる「学習問題」に焦点を当て、「問い」と呼ぶことにします。
「答え」は、「問い」を追究することによって獲得される「概念的知識」のことです。
つまり、その単元の「ゴール」と考えられます。
「スタート(問い)」と「ゴール(答え)」を決めることは、教材の準備として必要性が高いと考えます。
【指導計画の準備とは?】
単元の指導計画は、「問い」と「答え」が決まれば、ほぼできあがります。
以下、3年生「地域の安全を守る」を例に挙げて説明します。
この単元で獲得させたい概念的知識(ゴール)は、
- 「消防署や警察署などの関係機関は、地域の安全を守るために相互に連携して緊急時に対処する体制をとっていることや、関係機関が地域の人々と協力して火災や事故等の防止に努めていること」
です。
必要な「問い」は、
「火事や事故を防ぐためにどのような取り組みをしているのか?」(未然の防止)
と
「火事や事故が起こった時にどのような働きをしているのだろう?」(緊急の対処)
です。
この二つは、単元を見通し方向づける「大きな問い」となる。
「大きな問い」を軸にして考え、次に各時の問い「小さな問い」を考えます。
例えば
「消防車は、なぜ5分以内に火事現場に到着することができるのだろう?」
や
「火を早く消すために、どのような訓練をしているのだろう?」
などです。
それらの「問い」に対する「答え」を明記します。
下図のように「問い」と「答え」をデザインすることで、授業者自身がその単元を俯瞰し、授業の流れをつくることができます。
これですべての教材準備、指導計画準備ができたわけではありません。
「まずは」の準備です。
その他多くの準備は、目の前の子どもに合わせてよりよいものを吟味するべきであることは言うまでもありません。