概念的知識を獲得するために、社会的な見方・考え方を働かせた問題解決的な学習を行うことが必須です。
ここでは、まず「社会科的な見方・考え方」とは何なのかを説明します。
①社会的な見方・考え方の変遷
社会科発足以来、「社会的な見方・考え方」の捉え方は様々でした。
下図のように、それぞれの年度版によって示されている表記も違っていました。
平成20年度版では、「社会的な見方や考え方を成長させること」と表記されるようになり、以下のように示されていました。
社会科、地理歴史科、公民科においては、その課題を踏まえ、小学校、中学校及び高等学校を通じて、社会的事象に関心をもって多面的・多角的に考察し、公正に判断する能力と態度を養い、社会的な見方や考え方を成長させることを一層重視する方向で改善を図る。 |
しかし、「社会的な見方や考え方」が何なのか、その定義は明確に示されてはいませんでした。
そのため、「社会的な見方や考え方」の捉え方が人によって様々でした。
例えば、「見方」は「概念」で「考え方」は「価値」とする捉え方や、「見方」は「事実」で「考え方」は「概念」とする捉え方などです。
内容面に着目した捉え方だと考えることができます。
また、内容面だけでなく、問題を追究し解決するために活用するという方法面としても捉えられてきました。
つまり、これまでは、「社会的な見方や考え方」の内容的側面と方法的側面の両面を育成する社会科授業が目指されていたのです。
それが、今回の小学校指導要領(平成29年告示)解説 社会編では、以下のように「視点や方法」であるとはっきりと定義されました。
「社会的な見方・考え方」は、課題を追究したり解決したりする活動において、社会的事象などの意味や意義、特色や相互の関連を考察したり、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて構想したりする際の「視点や方法」である。 |
また、
小学校社会科においては、「社会的事象を、位置や空間的な広がり、時期や時間の経過、事象や人々の相互関係などに着目して捉え、比較・分類したり総合したり、地域の人々や国民の生活と関連付けたりすること」を「社会的事象の見方・考え方」として整理し、(以下略) |
とも明記されました。
つまり、「社会的な見方・考え方」は、社会科という教科ならではの学習の仕方、追究の仕方であり、方法的な側面に焦点を当てた方法概念であると捉えることができます。
「社会的な見方・考え方」は育成されるべき資質・能力ではなく、授業改善の視点であるということです。
新学習指導要領では、「社会的な見方や考え方」から、「社会的な見方・考え方」に変化しました。
「・(中黒)」が入っているのは「ベン図」のイメージです。
「見方」と「考え方」、違う言葉ですが、つながりが深いので便宜的に一つの単語として使うという意味です。
つまり、「見方」「考え方」は、それぞれ独立的に捉えられるものでありながら、一体として用いられ、相関的に働くものだと考えられます。
比較や分類、総合などの考え方は、教科横断的に捉えられるものですが、「見方」はその教科特有のものとなります。
その教科特有の「見方」があってはじめて、その教科ならではの「考え方」が働くのです。