社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1423 新刊『これからの社会科教育はどうあるべきか』



手元に届きました!
こちらは末席を汚す形での執筆でございます。
ちょうど学習指導要領が改定され、次の改定まで折り返しにきたようなところ…。
まさにナイスタイミング!
「これから」の社会科のことを考えるに相応しい一冊です。
澤井 陽介・中田 正弘・加藤 寿朗氏の執筆陣でおもろくないわけがないw
ぜひ手に取られてみてください。
以下、澤井氏の「はじめに」「おわりに」より。

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◼️はじめに
 「これからの社会科教育はどうあるべきか」
 これは社会科の授業の中で、教師から時折提示される種類の問いです。言うまでもなく、よりよい未来社会の方向を探ろうとするものです。では、社会科という教科としてはどうでしょう。
 社会科は、社会の変化、時代の変遷に応じて学習指導要領が改訂され、それに伴う変化を遂げてきました。しかしその一方で、学習指導要領の性質上、「ほぼ10年に一度の改訂時に社会の変化を踏まえて精査する形を繰り返すにとどまっている」という見方もできます。
 また、学校の教育現場からは「指導が難しい教科である」という声が、社会科や地理・歴史科を経験した大学生からは「覚えることが多くて苦手な教科」という声が聞かれます。こうした声からは、何か社会科だけが異質な教科だと受け止められているような印象を受けることすらあります。それは、社会科の改訂や社会科授業の改善について議論する際、社会科という教科の枠組みに限定された議論が中心になり、「学校教育における社会科」「教育課程全体の中の社会科」といった視点が不足していたからなのかもしれません。
 おそらく次の学習指導要領改訂は、2027年あたりになることでしょう。ですからそれまでの間に、多様な視点から「そもそもどうあるべきか」を自由闊達に議論したいと考えて上梓したのが本書です。
 現状の何が難しいのか、どう考えればそれが改善されるのか、世界の潮流や日本の教育改革の動向の中でこれからの社会科はどうあるべきか、そもそも社会科の本質をどこに求めればよいのか等々について、私を含めて、4名で自由に論じています。いずれも、既に決められた事項ではなく、よりよい未来を考えるための試行錯誤の一環です。本書をきっかけにして、今後数年間、読者の皆様と一緒に「社会科教育はどうあるべきか」について考えていければ幸いです。

◼️おわりに  
 本書の構想を練るに当たり、最も重視したのが執筆者の選定でした。  
 社会科の不易も流行も、過去も現状も未来も、自国も外国も、森も木 も、などと欲張って人選した結果、中田正弘先生、加藤寿朗先生、宗實 直樹先生にかかわってもらうことになりました。     
 その結果、「『これからの社会科教育はどうあるべきか』という問いに 対するアンサーはこれほどまでに多岐にわたるものか、語るべきことが 多いのか」と実感するに至りました。  
 なかには、前途多難で、自分から遠いものに感じてしまった読者もお られたかもしれません。実際、初見では、編者である私自身もそう感じ たくらいです。  
 しかしよく読んでみると、違った風景が見えてきます。  
 各執筆者の立場、日常的な社会科との関わり方は三者三様です。言葉 の使い方や言い回し、具体・抽象の程度もそれぞれ。そうであるにもか かわらず、各論のもつ意図や願いに、数多くの共通点を見いだすことが できます。その中心にあるのが「子どもの学びや育ち」です。あらため て私たち4人は教育者なのだと痛感します。  
 さて、最後にお伝えしたいことは、次のとおりです。  
 「目標や課題は共有した上で、その実現や解決に迫るプロセスは、各 自で主体的かつ個別最適に!」  
 まさに「これからの社会科授業の在り方」と同じです。本書を通じて 何かしらヒントを見いだしていただけたならば、あとは自分の選択・意 思決定です。ご自身がよいと思える授業づくりや教科研究を考えていた だければよいのだろうと思います。  
 学習の自己調整はエラーあってこそ。「トライアル&エラー」で、チ ャレンジングな授業実践を進めていただくことを祈っています。

       令和5年12月吉日 大妻女子大学教授 澤井 陽介