社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1211 問いの醸成

『社会科教育』No.789(2025年1月号)p.102で触れている「問いの醸成」について、個人的にいくつかご質問いただいたので、整理してみました。

◼️問いの醸成とは(定義)
「問いの醸成」とは、「この子」が自らの問題意識を生成し、それが育まれるプロセスを指す。さらに、その問題意識が他の「この子」と関わり合うことで、それぞれの「この子」独自の問題意識や、学級全体の問題意識、雰囲気や考え方が徐々に形成されていくことも含まれる。


◼️問いが醸成されるための条件
1. 受容できる関係性をもつこと

 子どもたちがお互いの問いを受け入れ、「それもいいよね」と肯定的に捉えられる関係性が必要。この互恵的な関係性は、子どもの粒だった「つぶやき」が豊かに表出できる土台となる。
2. 学習対象に対する自由な関わりを許容すること

 教師が子どもたちに対して、学習対象を自由に探索し、独自の視点で問いを立てられる環境を整えることが求められる。
3. 自分のくらしとの結びつきを実感すること

 子どもが学習内容を自分の生活や経験と関連付けることで、問いが「自分ごと」として深まる。
4. 「間」の確保

 子どもたちが問いを生成し、他者と共有し、触発し合うためには、考えるための「間」が必要。じっくり考えられる余白が問いの深化を支える。単線ではない、複線的でウネウネした学びの中で問いは醸成される。


◼️問いの醸成のプロセス
 問いの醸成は、子どもの何気ない「つぶやき」から始まることが多い。その「つぶやき」が、他者と共有され、対話や相互触発を通じて広がり、深まり、学級全体に波及していく。この過程では、以下のような変化が起こる。
・問いが相互に影響し合い、新たなひらめきや視点が生まれる。
・子どもたちが自らの問いに加え、他者の問いも「自分ごと」として受け止める。
・集団全体での学びの活性化が進む。

 つまり、「問いの醸成」は、子ども同士が共に学ぶ意義を実感するものとなる。それぞれ異なる背景や経験をもつ子どもたちが集まり、互いに触発されることで学びは膨らみ、深まり、つながりを持つ。特に、自由に「つぶやき」、それを受け入れられる環境があることで、子どもたちは主体的に考え、学び合うことの楽しさを感じることができる。
 問いの醸成が可能になる集団は、個々の問いを尊重しつつも、相乗効果によって新しい視点や価値観を共有することができる。まさに「共創的な場」となる。教師はこの過程を支える存在として、問いを育む環境を意識的に整える必要がある。