社会のタネ

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1377 子どもとともに追究を紡ぐ教育観

愛知教育大学附属岡崎小学校をさぐる。

以下の「用語解説」は『生活を拓く授業』p.246に記されているもの。

この捉え自体、おもろいですよね。

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対象 —— 教材と出会った子どもたちが、その子なりのめあてをもって追究を始めようと自覚したとき、そのもの。

こだわり —— 「どうしてかな?」という疑問や、「こんなことをしたい」という思いが、継続的に意識されるようになったもの。

支援 —— 子どもたちが対象に出会い、追究していくとき、子どもたちによりそい、支えていく教師の営みのすべて。

ひとり調べ —— その子どもならでは対象をきめさせ、その子どもなりの方法で、追究を深めていく学習活動。

かかわり合い —— 同じものを見て、感じた事実や思いを出し合い、磨き合って、その後のひとり調べに勢いをつけたり、視点を決定させたりする授業。

鍛える —— 子どもが伸ばそうとする芽を育てるために、教師が子どもの動き出そうとする方向や勢いを予測して、温かく見守り、つまづきはしたたかに支えるような関わり方をすること。

省察 —— 教師が、日々の実践をふり返る中で新たに思いついたことや、行ったことから感じ取ったこと。

教師メモ —— 毎日の実践のなかで生まれてくる感動や悩みを赤裸々に残すために、教師が書き記している記録。そこには、ひとりひとりの子どもの成長を願い、厳しく見つめる教師の思いが書かれたり、迷いやうらはらが書かれたりする。

朱記 —— 子どもの気づきを意識づけたり、追究の方向を自覚させたりするために行う教師の朱書き。

対話 —— 子どもの意志をさぐり出し、子どもの考えを認めたり、甘さを指摘したりするために行う、教師と子どもの話し合い。

安定する —— 新たな視点での追究方法が見つかり、追究がいきづまったり、そ のような追究に満足して意欲が減退したりする状態。

語りきらせる —— ひとり調べで得た事実や思いを、仲間にむかって語らせることで、その追究に自信をつけさせたり、追究の弱さや足りなさを自覚させたりするために行うことがら。

よびこむ —— 追究を深めたり、追究に相棒をかけたりするために、子どもが新たな教材・教具を必要と感じ、取り入れること。

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以上の用語を使いながら、考えられる教育観を整理してみました。

ざっと以下のような感じでしょうか。

 

教育とは、子ども一人ひとりが「自分の世界」と出会い、それを自らの言葉で語り、考えを深め、他者と響き合いながら〈探究する力〉を育む営みとして考えられる。

教師の役割とは、あらかじめ用意された答えに導く者ではなく、子どもが自らの「対象」と出会い、「こだわり」をもって追究していけるような場を創り、「支援」し続ける伴走者である。

「ひとり調べ」は、子どもが自己の興味・関心を手がかりに、対象を主体的に捉え、学びを深めていく行為である。

一方で「かかわり合い」は、その個の営みに風を吹き込み、視点を広げ、他者との共鳴を生む場。学びは常に個から始まり、共同性の中で磨かれ、再び個に戻って深化していく。

そうした探究の道のりを支えるために、教師は「鍛える」存在である。子どもの芽吹きを信じ、揺れやつまずきに寄り添い、時に挑みかけ、時に後ろから見守る。

教師の「省察」や「教師メモ」、「朱記」などは、子どもの言葉にならない学びを掬いあげ、丁寧に記録し、次の手立てを見出すための営み。

また、「対話」は教師と子ども、子ども同士が共に考えを紡ぎ合い、自分の思考を磨いていくための大切な空間である。その中で学びが「安定」し、自らの言葉で「語りきらせる」ことで、子どもは自分の追究を生きたものとして手にしていく。

「よびこむ」とは、学びの深化において、必要な教材や仲間、視点を子ども自身が求め、取り入れていく姿であり、それこそが探究者としての子どもの成長の証である。

このように、子どもが〈世界に出会い、世界を問い、世界にかかわる〉存在として育っていくプロセスを、教師が共に歩み、信じ、支えること。答えを教えるのではなく、「問いとともに生きる力」を育てる。

大切にしている「用語」からだけでも、これだけ読み取ることができる。

素敵やなぁ。

 

〈参考文献〉

愛知教育大学附属岡崎小学校(1988)『生活を拓く授業』明治図書