秋は美しい紅葉の山々。
澄んだ空気と豊かな自然あふれるおだやかな場所。
日本六古窯としても有名な焼き物の里です。
私は、この場所の雰囲気、人が好きです。
数ある窯元の中に「丹窓窯」という窯元があります。
そこでは、「スリップウェア」という、器の表面をドロ状にして、文様を描くイギリスの伝統技法で陶器が作られています。
何千年も昔から作られていると言われています。
その技術を受け継いでいる窯元が「丹窓窯」なのです。
「丹窓窯」7代目主人の市野茂良さん。
氏は24歳の時にイギリスへ渡り、スリップウェアの技術を獲得してきました。
しかし、残念ながら今から9年前にお亡くなりになられました。
その時、江戸時代から続いてきた「丹窓窯」を閉めてしまおうとなりました。
そこで周りから背中をおされ後を継いだ人がいます。
茂良さんの奥さんの茂子さんです。
仕事場も見せていただきました。
ここは当時と変わらない茂良さんの仕事場だそうです。
これを見せてもらった時、心にじ〜んときました。
「人の歴史と思いがつまった場所なんだな」
「代々受け継がれた歴史と伝統が今も息づいているんだな」
そう感じました。
今は茂子さんとその娘の公子さんとで作陶を続けています。
写真の器は、茂良さんが亡くなられる前に作られた器です。
「もの」をいただくという感覚よりも、「こと」をいただくという感覚です。
なぜそのものが生まれたのか、なぜそれが受け継がれているのか、その足跡、その意味を感じると違ったようにものが見えてきます。
うまく言えませんが、歴史や伝統、人の想いなど、言葉では語れないものが息づいていると思うのです。
そういった時に、私は「豊かさ」を感じます。
その器に熱いお茶を入れて、ほっと一息つく時間も私にとっては「豊かな」時間なのです。
「豊かさ」とは、見えないものを感じる心なのかもしれません。