社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

259 「豊かさ」とは?①(「豊かさ」シリーズ1)

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 兵庫県篠山市今田町。春は鮮やかな新緑。

秋は美しい紅葉の山々。

澄んだ空気と豊かな自然あふれるおだやかな場所。

日本六古窯としても有名な焼き物の里です。

私は、この場所の雰囲気、人が好きです。

 

数ある窯元の中に「丹窓窯」という窯元があります。

そこでは、「スリップウェア」という、器の表面をドロ状にして、文様を描くイギリスの伝統技法で陶器が作られています。

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何千年も昔から作られていると言われています。

その技術を受け継いでいる窯元が「丹窓窯」なのです。

 

 「丹窓窯」7代目主人の市野茂良さん。

氏は24歳の時にイギリスへ渡り、スリップウェアの技術を獲得してきました。

しかし、残念ながら今から9年前にお亡くなりになられました。

その時、江戸時代から続いてきた「丹窓窯」を閉めてしまおうとなりました。

そこで周りから背中をおされ後を継いだ人がいます。

茂良さんの奥さんの茂子さんです。

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 仕事場も見せていただきました。

ここは当時と変わらない茂良さんの仕事場だそうです。

これを見せてもらった時、心にじ〜んときました。

「人の歴史と思いがつまった場所なんだな」

「代々受け継がれた歴史と伝統が今も息づいているんだな」

そう感じました。

 

今は茂子さんとその娘の公子さんとで作陶を続けています。

写真の器は、茂良さんが亡くなられる前に作られた器です。

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「もの」をいただくという感覚よりも、「こと」をいただくという感覚です。

なぜそのものが生まれたのか、なぜそれが受け継がれているのか、その足跡、その意味を感じると違ったようにものが見えてきます。

うまく言えませんが、歴史や伝統、人の想いなど、言葉では語れないものが息づいていると思うのです。

そういった時に、私は「豊かさ」を感じます。

その器に熱いお茶を入れて、ほっと一息つく時間も私にとっては「豊かな」時間なのです。

 

「豊かさ」とは、見えないものを感じる心なのかもしれません。