〈「比較」を通して特殊と一般を把握する〉
特殊性と一般性の把握も、全体と部分の比較思考を通してはじめて可能になります。
5年生「水産業のさかんな地域」の学習を例に挙げます。
次の表のように単元を構想しました。
第1時〜第5時までは、坊勢島の事例を学習します。
一般の事例を扱うよりも特殊な個別の事例を扱う方が、社会的事象をより身近に感じられる子どもが多いと感じたからです。
坊勢は、知名度は高いとは言えないですが、保有漁船数が全国で最も多く、水揚げ数量・水揚げ金額共に兵庫県内の上位を占めています。
また、とる漁業、育てる漁業共に「坊勢ならでは」の工夫があり、そこで働く人々の思いや願い、こだわりなどがよく見える好事例地なのです。
何より、私自身がその島の小学校で勤務したこと、そして、坊勢島で実際に様々な漁業に触れさせていただいたという事実がありました。
単元の展開としては、まず坊勢という個別の事例で具体的な理解をねらいます。
しかし、本単元で扱うのは地域学習ではありません。
あくまでも産業学習です。
「日本における」水産業のもつ一般的な傾向や特色を理解させることが大切です。
そこで、単元の後半には、坊勢の事例と比較しながら、日本の水産業の現実や問題点まで範囲を広げます。
一般化を試みるようにしました。
坊勢島という特殊な事例の具体的理解にとどまることなく、そこを窓口にして一般の水産業の全体理解につなげることができるのです。