社会のタネ

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866 二項対立の罠

 教育の世界にも多くの二項対立的な考え方が存在します。

 一斉授業か個別学習か、履修主義か修得主義か、デジタルかアナログか、オンラインか対面か、紙か端末か、認知能力か非認知能力か、ゆとりか詰め込みか、系統主義か経験主義か…。

数え上げれば切りがありません。

このような二項対立的な不毛の議論から抜け出すべきです。

 

 苫野一徳(2014)は、教育をめぐる問題は、単純な二項対立で論じられやすいことを指摘した後、次のように述べています。

「こうした二項対立的な問いの立て方を、わたしは『問い方のマジック』と呼んでいます。『あちらとこちら、どちらが正しいのか?』と問われると、わたしたちは思わず、『どちらかが正しいんじゃないか』と思ってしまう傾向があるのです。

 しかし、教育をめぐる問題(教育だけではありませんが)に、絶対に正しい答えなどまずありません。あちらとこちら、どちらが絶対に正しいかなど、ほとんどの場合、決められるようなものではないのです。肯定派にも否定派にも、それぞれ一定の“理”はあるものだからです。この『問い方のマジック』が、これまでどれだけ教育議論を不毛なものにしてきたかは、いくら強調してもしすぎることありません。」

 

 そして、建設的に議論するためには、「そもそも何のためか?」という問いにできるだけ共通了解可能な“答え”を解明することが重要だと指摘しています。

 白か黒かはっきりと分けられるほど単純なものはありません。

「何のための個別最適な学びなのか?」

「何のためのオンライン学習なのか?」

「何のための一斉授業なのか?」

その「そもそも」を考え、そこから生まれる発想やアイデア、ビジョンを共有していきたいものです。

そうすれば、具体的な方法を建設的に進めることができます。

 

二項対立の中にはグレーゾーンが存在します。

そのグレーゾーンを新たな視点で整理したり融合させたりすることで、新たな思考や枠組みを生み出すことができます。

対立しそうなものを調和的に考え、お互いを補い合い、新たな価値を創造していくことが重要です。

二項対立という思考停止状態にならないよう、子どもたちと共に、我々大人にとっても「柔軟な思考」「しなやかな心」「豊かな創造力」が求められています。

 

〈参考文献〉

苫野一徳(2014)『教育の力』講談社現代新書