社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1026 第二の教材

 教材化を図るときに意識したいのは、「第二の教材」です。「第一の教材」とは、子どもたちが追究する対象である「人」「もの」「こと」です。「第二の教材」とは、追究を通じて生み出された一人ひとりの子どもの思考や感情のことです。その一人ひとりに生じた思考や感情は、誰に対してどのような気づきや思考の発展をもたらす可能性があるかも含めて教材を考える必要があると、奈須正裕(2013)は言います。教材化を図るときに、その教材を扱うことで子どもの内面でどのような変化が起こるのかを予想する。そして、それがそれぞれどのような作用を学級内で引き起こすのかという視点をもつことも大切にしたいものです。
 
 教材化を図るときは、温めておくことも必要です。その時にすぐに教材化できなくても、その学年を担当したとき、もしくは数年後に教材になることがあります。それは、時間がたつにつれてその素材に対する視点が変化し、新たな考えも加わるからです。そうすることによって、ゆとりと柔軟さのある教材となるのです。また、じっくりと時間をかけることで、ぼやっとしていたものが明確になってきます。例えば、この素材を教材にすることで、子どもたちにどんな力をつけさせたいのかなどがつかめるようになってくるのです。じっくりと醸成していく感じです。教材に豊かさを出そうと思えば、時間をかけてじっくりとあたためていくことも必要なのかもしれません。
 
有田和正氏(1982)は、「教材は見えにくい社会に、ある形を与え、見えるように具体化したもの」と表現しています。逆に言えば、「授業は、見える教材を通して見えにくい社会を見ていく営み」だと言うことができそうです。つまり、豊かな教材であれば、社会を見る営みも豊かになっていくということです。