社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1339 好いものは、好い

 原田マハ氏のアート小説をこよなく好んで読んでいる。
本書は原田氏得意の史実に基づいたフィクションアート小説。
『楽園のカンヴァス』や『暗幕のゲルニカ』のようなミステリー性はない。
しかし、やはり惹き込まれながら読み進めることができる。
実に味わい深い作品である。
本書を一言で表現すると、「愛」である。
人への「愛」。国への「愛」。
そして「芸術、陶芸」への愛。
原田氏の小説は、いつもいっぱいの「愛」に溢れている。

 日本文化を愛し、東西の文化交流を目的に来日したバーナード・リーチと、彼の書生を務めた沖亀之助の交流を中心に描かれている。
多くの日本人芸術家と交流し、支えあいながら日本の美を愛し、日本と西洋の架け橋となったバーナード・リーチ
事実に基づいたフィクション作品であるが、全員が実際に存在したいたかのようにリアルに描写されている。
今にも目の前で登場人物が動きだすような感覚である。
リーチ、濱田、亀之助(架空の人物であるが)に無性に会いたくなる。
そういう感じにさせてくれる。
 素晴らしい出会い。大切に想う気持ち。そして情熱…。読み進めるごとに胸にグッとくるものがある。何度も感動する瞬間に出会うことができる。壮大なドラマである。

 はじめはだれも「名もなき花」。
 「—やったことがない。行ったことがない。体験したことがない。
 だからこそ、やってみる。だからこそ、行ってみる。だからこそ、自分自身で体験してみる。
 わからないことは、決して恥じることではない。わからないからこそ、わかろうとしてもがく。つかみとろうとして、何度も宙をつかむ。知ろうとして、学ぶ。
 わからないことを肯定することから、すべてが始まるのだ。」
 何かを始めるときの人はエネルギーに満ちあふれている。周りから見れば滑稽と思えるほどの没頭ぶり。
こういう姿、何歳になっても大切にしたいと思う。
そこから生み出されるものはいつも尊い

「好いものは、好い…。」
そう。いつになっても、好いものは、好いのである。