社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1470 子どもの『眼』が育つこと

伝統ある大阪社会科研究会の会報に寄稿させていただきました。
「ん〜、何かこうかなー。」と考えていましたが、実践者の視点として、子どもの育ちについて書かせていただきました。
貴重な機会をありがとうございました。

 

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時論「子どもの『眼』が育つこと」

関西学院初等部 宗實直樹

 

子どもの育ちを考える

 現代教育は、主体的・対話的で深い学び、個別最適な学びやGIGAスクール構想など、多くの革新的なアプローチに溢れています。その中で見失ってはいけないことは、子どもの育ちの視点です。社会科を通じてどのような子どもを育てたいのか、育ってほしいのか、もう一度問い直す必要があるのではないでしょうか。

 社会科では、子ども達が「公民としての資質・能力」を身につけることが特に重視されています。これには、自分で問題を見つけ出し、解決策を考える能力や、不確実な未来を生き抜くための力が含まれます。私は、「社会を豊かに見て、よりよい判断をした上で自分や周りの幸せのために主体的に行動できる力」ととらえています。「自分と人の幸せのために行動できる人に育ってほしい」と、心から願っています。そのためには、子どもが、自分たちの生きている社会を豊かに見られるようになることが必要です。

 

♢「社会の眼鏡」を活用する

子どもが社会を豊かに見られるようになるには、子ども自身の「眼」が育たなければいけません。子どもの見る「眼」が育てば、問題を発見し、自分との関わりの中で解決しようとする想いを高めることにつながります。子どもの感度が上がり、日常の中から問題を発見できるアンテナが立つようになります。さまざまな社会的事象の「おもしろさ」や「不思議さ」に引っかかるようになります。その「おもしろさ」や「不思議さ」のもとを調査したり考えたり、友だちと交流してさらに深めたりする経験を重ねます。そうすることで、追究する力を高めよりよく問題解決を図れるようになり、その過程で事実的知識や概念的知識を獲得できるようになります。これらの知識は、社会的事象の目には見えない関係をよりよく見えるようする「社会の眼鏡」のようなものです。多くの「社会の眼鏡」を手に入れ、その「社会の眼鏡」を活用して社会を見ることで、さらに子ども自身の「眼」が育ちます。子どもたちは目に見えないものを認識し、目に見えるものをより鮮明に豊かにとらえることができるようになります。

 

理念と信念をもつ

このようにして、子どもの「眼」が育てば、子どもたちは社会をより豊かに捉え、自らの力で理解を深めるようになります。そのきっかけとなるのは、やはり教師のはたらきかけです。子ども主体の学びが注目されている今だからこそ、子どもを育てるための教師の主体性を再度確認する必要があるのではないでしょうか。そして、「社会科を通じて、すべての子どもの『眼』を豊かに育て、どの子も幸せにする」という理念と信念をもち、子どもの姿から具体的なレベルで考え、検証と実践を繰り返していきたいものです。理念と信念さえあれば、それを実現させるための方法は教師の個性や得意を存分に活かせばよいと考えます。

教育の目的は、子どもたちが持つ内なる力を育むことです。子どもたちが社会を豊かに理解し、積極的に関わることが、よりよい社会の形成につながります。教師一人ひとりがこの重要な役割を果たし、子どもたちの「眼」を豊かに育てることができれば、私たちはその子どもたちと共に、明るい未来を築くことができるはずです。