〈3 発問の間口を考える〉
「なぜ〜?」や「どのように〜?」など、間口の広い発問の場合、問いと答えの距離が遠くなることがよくあります。
問いと答えの距離が遠すぎて、何を答えたらいいのか分からなくなる子が想定されます。
いきなり間口の広い発問をするのではなく、
「いつ〜?」「どこで〜?」
のように、思考する場面を絞った間口の狭い発問から始めることで「つまずき」を軽減させます。
「いつ」「どこで」「だれが」「何を」などを考えることによって事実的知識を獲得することができます。
それは、目に見えてわかる知識のことです。
「間口の狭い問い」を重ねることで、「なぜ?」に答えるための知識を積み重ねていきます。
5年生の「米作りの盛んな地域」の事例で説明します。
T「これは何でしょう?」
せんべい、酢、餅の実物を一つずつ提示し、子どもたちが答えます。
T「3つに共通していることは何だと思いますか?」
子どもたちは自由に答えます。答えは、すべてお米でできているということです。
T「他に米からできている食品は何がありますか?」
C「あられ」「酒」「米味噌」「白玉」等…、様々に発言されます。
T「日本ではお米で作られた食べ物がたくさんあるのですね。そのお米、すべての都道府県で作られている。○か×か?」
と問い、資料集で調べさせます。答えは〇です。
間口の狭い発問を繰り返し、お米に対する興味関心を高め、事実的知識を獲得している段階です。
T「日本の米の生産ベスト3はどこだと思いますか?」
これも資料集で調べさせます。
答えは、①新潟②北海道③秋田(2018年農林水産省より)
T「世界の米の生産ベスト3はどこだと思いますか?」
答えは、①中国②インド③インドネシア」(2018年FAOより)。
順位を確認した後、日本地図と世界地図を使い、それぞれの生産が多い場所を確認し、比較させます。
C「え、世界では南の暖かい場所で生産されるのに、日本は北の寒い場所で多く生産されるんだ」と、気づく子が現れ、問いが生じます。
そこで、
「世界では暖かい地域で米の生産が多いのに、日本ではなぜ北の寒い地域で米作りが盛んなのだろう」という学習問題を立てることができます。
「間口の狭い問い」を重ねることで、問題意識を徐々に高めていきました。
続いて、5年生「水産業がさかんな地域」の事例で説明します。
A |
B
|
AとB、2枚の写真を順に提示します。
T「何をしているところだと思いますか?」C「魚をとっている」
T「何の魚をとっていると思いますか?」
C「Aはカツオ」C「Bはサバかな」
Aの一本釣りは既有知識としてもっている子も多いですが、Bは何か分かりにくく、様々な魚の名前が発表されます。しかし、実はBもAと同じく「カツオ」なのです。
C「え!?同じ魚なのにどうして違うとり方をしているの?」という問いが生じます。そこで、
「なぜカツオは2つのとり方をするのだろう」
という問いを立てることができます。「間口の広い問い」です。
この間口の広い「なぜ?」の問いだけでは答えることが難しいので、この後に「間口の狭い発問」を重ねていくようにします。例えば、
「何を使ってとっているのだろう?」と、道具に着目をさせる発問。
「どのような方法でとっているのだろう?」と、とり方に着目させる発問。
「どれくらいの量がとれるのだろう?」と、とれる量に着目させる発問。
などです。
このように、「間口の狭い発問」を重ねることで、それぞれのとり方の違いが明確になってくるのです。
明確になった違いに着目させることで、とり方によって加工の仕方が変わってくることを理解することができます。
Aの一本釣りは、とれる量は少ないですが、魚に傷もつきにくく新鮮なまま出荷できるので、刺身などに使われることが多くなります。
Bの巻き網漁は、量はたくさんとれますが魚が傷ついたりすることが多いので、缶詰などの加工向きになります。
つまり、「なぜカツオは2つのとり方をするのだろう?」の答えは、目的に応じてとり方の工夫をしているということになります。
いきなり「なぜ?」と「間口の広い発問」をすると、子どもたちは「え、難しい…」「わからないよ…」という状態になり、「つまずき」を感じてしまいます。
教室の空気は重くなり、子どもたちは固まります。
「 間口の狭い発問」を繰り返すことで小さな「わかる」を繰り返し、小さな成功体験が増えます。
それが子どもの自信につながり、楽しんで追究していく子どもたちの育成につながるのです。