子どもの「複線型の学習」を支えるICT活用と教師の役割
7.子どもの主体性
子どもの主体性にもレベル差がある。子ど もの主体的学習において、どのレベルの子ど もの主体性を育くむのかを考えたい。溝上 (2018)は、図7のように三層に分けた主体 的な学習スペクトラムが認められると述べる。
図7 主体的な学習スペクトラム
この階層に従えば、図6〈B〉のような学習形態における子どもの主体的学習では、(III) は広義すぎるので、(I)もしくは(II)に あたると考えられる。全体で解決するべき課 題はあるが、一斉授業のように決してその課 題のみに依存しすぎている感じではない。ど ちらかというと、一人ひとりが学習方略5等 を選択して自己決定していく学習になるので、 (II)の層の意味合いが大きくなる。では、 子どもが「(II)自己調整型の主体的学習」 を行う際の教員の役割とは何だろうか。それ は、子どもが自己調整しながら学習を進めら れるようにコーディネートし、子どもの学び を支える存在になることだと考える。もう少 し具体的に言うと、学習目標をより意識でき る授業デザインを行い、それぞれの子どもが 学習方略を選択したり、メタ認知を促したり できる環境づくりをすることである。
〈註〉
5 学習の効果を高めることをめざして意図的に行う 心的操作あるいは活動(辰野 1997)
〈参考文献〉
溝上慎一(2018)『アクティブラーニング型授業の 基本形と生徒の身体性』東信堂
辰野千寿(1997)『学習方略の心理学――賢い学習 者の育て方』図書文化