『知られざる教育』(1958)『人間形成の論理』(1964)と並んで本書を合わせた3冊が、氏の教育についての本格的な考え方をまとめたものとされています。
『人間形成の論理』発刊から9年かけての本書の発刊。
その年月の長い過程をつきつめて整理し直す道筋が捉えられます。
創造は持続の上に成り立ち、非常な地味な営みであり、少しずれたものの中にこそものの本質や真実があるという論。
読む度に考えさせられます。
安定的な見方にのみ身を置くのではなく、少しずらして物事を見ようとする見方を大切にしていこうと思います。
さて、本書の中におさめられている「生きた授業を成立させるための観点」。
何度読んでもはっとさせられるものがあります。
「生きた授業を成立させるための観点」
〈三原則〉
1 計画はかならず破られ修正されなくてはならない
2 正解はつねに複数である
3 空白を生かしてこそ理解は充実する
〈三方策〉
1 迷わせ、わからなくしてやること
2 教えないこと、すくなくしか教えないこと
3 教科のわくにとらわれぬこと、授業時間にこだわらぬこと
〈六つの具体策〉
1 立往生せよ
2 山をつくれ
3 拮抗を活かせ
4 ひっくり返しをせよ
5 あとをひく週末にせよ
6 ひとりひとりにむかえ
〈6つの問いかけ〉
1 自分のコンディションをととのえることにちゅうじつであるか
2 子どもが教師の意図に合わせようとしているのがみえるか
3 タイミングに心をくばるゆとりをもっているか
4 忘却と思いおこしを生かそうとしているか
5 ひとりを通じて多くの子をとらえる姿勢をもっているか
6 不都合と思うことに身を寄せていこうとしているか