子ども研究として重要な一冊が、『現場の児童研究』です。
本研究の対象となったのは、終戦前後に生まれた子どもたちで、衣食住にも事欠いている状態でした。
ただ、子どもたちは、自由に子ども自身の世界にひたりきっていました。
だからこそ、子どもたちのありのままの姿をリアルに事例として取り上げることができました。
復刻版の序文には、次のように記されています。
「私達の研究は、子どもの育ちの中味を可能な限り深く、細かくつかまえて、何がどう変わるのかが知りたくて、つきつめていこうとしたものである。『子どもとは何か』とは、子どもは『どう変わるのか(どう育つのか)』と言うことにほかならないからである。その道筋の見当つきができれば、育ちの一歩先が読め、教育として打つ手を一歩確かにできるとしていたのである。」
このような考えのもと、各学年の発達の特性、個人事例、各学年の学級経営の吟味がなされているのが本書です。
初版が1956年、復刻版が1999年、その間43年。40年以上前の子どもの研究が今日の子どもに当てはまるだろうかという心配もあったようです。それからまた20年以上時を経た現在ではどうでしょうか。当然、時代背景は大きく違います。しかし、多くの事例をもって吟味、検討し、子どもを理解しようとすることに関しては、今と変わらない不易の方法だと感じています。
〈参考文献〉