社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1030 子ども同士をつなげる

 子どもは、経験もなしにつながることはありません。

子ども同士の信頼を築くには、それなりの経験が必要です。

日常生活や学級活動、学校行事などの特別活動での経験が考えられます。

しかし、学校生活の中で子どもたちが最も多い時間をすごしているのは授業時間です。

授業の中で子ども同士がつながる方法について考えてみます。

 

 例えば、授業の中で考えられる共有化の方法です。

共有化とは、一人の考えのよさを全員に広げ、全員でよりよい考えをつくり出していくことです。

つながりを深めるために「みんなで学んでいる」ということをより強く意識します。

 

■共有化の具体例

 5年生の「高い土地のくらし」群馬県嬬恋村 の事例で説明します。

「高い土地の冷涼な気候を生 かしたキャベツ栽培・出荷の工夫について理解すること」が本時のねらいです。

授業の「山場」の場面で考えます。ブラインドをかけたグラフを提示します。

どの季節もキャベツの生産が行われていることを確認した後、ブラインドを外します。

群馬県産のキャベツが多く出荷される季節がわかります。

群馬県産のキャベツの夏秋出荷が多い理由を、地理的な視点(自然条件)から他の地域と比較することで、「群馬県 産のキャベツは高い土地の涼しい気候を利用して 夏に栽培している」と発言する子どもが出てきます。

その子どもの発言をペアで話して再生させます。

一人が得た概念等に関わる知識を全員に広げます。

さらに、夏に生産することの「よさ」を考えさせます。

需要と価格について関係的な視点(経済)から捉えることで、「群馬県は夏の涼しい気候を利用してキャ ベツ生産を行い、他県の出荷が少ない夏に多く出荷できます。

そうすることで、高い値段で販売することができ、利益が上がる」という概念等に関わる知識を獲得する子どもが出てきます。

ある子どもが「あ、わかった。

他県の出荷が少ない夏に出荷することで...」と発言します。

その子の発言を途中で止め、「A さんが、この後どんなことを言うか想像できますか?」と A さんの発言を手 がかりに、全員で考え継続させます。

「高い値段で販売し、利益を得ることができる」とAさん以外の子が答えます。

 

■共有化の目的

共有化を図ることで、理解のゆっくりな子は、他の子の考えを聞きながら理解を進めることができます。

理解の早い子は、他の子へ考えを伝えることでより深い理解につながります。

このように、「学級のみんなと学ぶと、学びがより深くなる」ことを実感させ、価値づけたいものです。

共有化は、学びを深めるとともに、安心して学びを進められる雰囲気をつくることができます。

 

■ベースは安心感

共有化を行うベースとなるものは、「安心感」です。

「何を言っても受け止めてもらえ る」「間違えても価値づけてもらえる」「分からなくても助け合える」このようなことを子 どもたちが感じているかどうかが重要となります。そのために、誰でも自由に話せる雰囲気を つくることが大切です。

その一つの方法として、事実や考えを問うよりも、予想する場 面を増やし、「発言する」というハードルを下げることが考えられます。

まずは、発言することに対する抵抗感を減らしていきます。

そして、その中で出てくる「わからない」と いう声を賞賛し、「わからない」という声があるからこそ学習内容が深まったり発展したりするということを価値づけます。

日頃の授業に対する意識とその積み重ねが、子どもたちの「安心感」を醸成させていきます。

とはいえ、「わからない」と言うことはなかなかハードルが高いです。

「わからない」を出させるために、

 

「今、当てられたら困る人?」

「正直、スッキリしていない人?」

「頭の中に「?」がある人?」

「ヒントがほしい人?」

 

と、少し問い方を変えてみるのもいいかもしれません。

問い方は違いますが、その答えはすべて「わからない」と言っているのと同じです。

また、子どもが誤答を言った時に教師がどのように反応するかで大きく変わってきます。

誤答そのものに反応するのではなく、その意味や考え方に反応します。

「○○さんはどう考えたのか説明できる人はいますか?」などと訊くことで、その子の思考に寄り添うことができます。

「おしい!」「わかるよ」などの温かい声があふれる学級にしていきたいものです。

(田中博史(2015)を参考)