社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1064 転移する知識

 「先行き不透明な時代」とよく言われます。これから子どもたちはそのような時代を生きていきます。そこで必要な力とはどのような力なのでしょうか。一つは、どのような変化にも対応できる柔軟性をもった力だと考えられます。その力を具体的に言うと、先述した「概念的知識」だと考えます。概念的知識とは、社会的事象の目には見えない関係性を説明するための知識であり、他の事例や事例地に応用したり転移したりすることができる汎用性の高い知識のことです。その場でしか通用しない知識であれば、何が起こるのかわからない時代には通用しません。学んだことを適用できる知識が必要です。心理学的に言えば、「転移する知識」と言えます。

広岡亮蔵(1964)は、

「転移は学力の塊」

と表現しています。さらに、

「物ごとの本質構造を、実感をもって主体的に把握した知識であるときに、転移力をもつ」

「知は力なり、といわれるほどの本物の知識ならば、態度に裏打ちされた知識、態度を含んだ知識でなければならない」

と述べています。

 「態度」とは、主体的に学びに向かう態度だと捉えることができます。つまり、ここで言う知識とは、技能や態度、心の姿勢などを含めた「豊かな知識」だと捉えることができます。そのような知識であればこそ転移できるものになると考えられます。

 転移可能な概念的知識をより豊かなものにし、その知識を生かして問題解決していく子どもの姿は、社会科における本質的な姿だと考えられます。