篠原は個性を「ある個性」と「成る個性」にわけている。
「ある個性」とは、子どもが出生と共に有する先天的な特殊傾向、もしくはその自然の発達をさすと説明する。一方、「成る個性」または「成りつつある個性」とはこの先天的傾向が、広義(社会的同化をも含めて)の教育により、次第に内容を得て、次第に客観的、精神的に発展していく姿をさすと説明している。「ある個性」は発展の基礎であり、「成る個性」は発展としての課題である。かりに「ある個性」を自然的、または心理的(主観的)個性、「成る個性」を普遍的(客観的)または倫理的個性と名付けるとしていた。
人の発達は、「ある個性」から「成る個性」への発達であり、教育は個性(ある)から個性(成る)への補導であると述べている。
篠原助市(1949)『改訂 理論的教育学』協同出版株式会社
篠原助市教育学三部作。