「問い方によって思考は見える」と言われても、
「じゃあ、どんな思考を、どう分類すればいいの?」
「それぞれの思考に、どんな問いが対応するの?」
という疑問が残る方も多いと思います。
ここでは、社会科でよく問われる“思考の型”を整理し、それぞれにふさわしい問いの形式や評価の視点を、具体的に確認していきます。
(1)“思考・判断・表現”を見取りやすくするために分類する
学習指導要領では、「思考・判断・表現」と一括りにされますが、現場で見取るためには、もう少し細かく分類した方が見えやすくなります。
ここでは以下の6つの分類で整理してみます
① 因果関係をとらえる
ねらい: 原因と結果、前提と帰結など、出来事のつながりを理解する
問いの例:
「なぜ瀬戸内海の地域にはため池が多いのか?」
「この政策が実施されたことで、どんな変化が起きたか?」
評価の視点: 複数の情報をつなげ、理由を論理的に説明できているか
② 比較して考える
ねらい: 共通点や相違点を見つけ、分類・判断する力
問いの例:
「高い土地と低い土地のくらしの共通点を書きなさい」
「AとBの制度の違いをまとめなさい」
評価の視点: 適切な観点で比較できているか/違いと意味を理解できているか
③ 資料をもとに考える
ねらい: 複数の資料を読み解き、必要な情報を見出す力
問いの例:
「グラフAと表Bから読み取れることを説明しなさい」
「この問題を解決するには、①〜⑧の資料のうちどれを選ぶべきか?」
評価の視点: 資料の要点を読み取れているか/資料の使い方に妥当性があるか
④ 意思決定・価値判断
ねらい: 複数の選択肢の中から一つを選び、その理由や背景を説明する力
問いの例:
「あなたならどちらの案を選びますか?理由も書きましょう」
「防災のために一番効果的だと思う取り組みを選び、その理由を説明しなさい」
評価の視点: 根拠をもって判断・選択しているか/理由が具体的か
⑤ 多面的・多角的にとらえる
ねらい: 一つの事象を複数の立場や視点から捉える力
問いの例:
「観光客と地元の人、どちらの視点からもこの計画を評価しなさい」
「この制度は、だれにとってどんな影響があるだろうか?」
評価の視点: 複数の立場・要因に目を向けているか/一面的な理解にとどまっていないか
⑥ 構想する・提案する
ねらい: 問題を見いだし、解決の方法や提案を構想する力
問いの例:
「ごみを減らすために自分にできることを提案しなさい」
「町をよりよくするためのアイデアを理由とともに書きましょう」
評価の視点: 実現可能性・根拠・独自性などをふまえた提案になっているか
(2)分類によって「問いづくり」も「見取り」も整理できる
このように分類することで、問いをつくるときに
「これは何を考えさせたい問いなのか?」
「子どもがどんな力を使って答えを出そうとしているか?」
を明確に意識できるようになります。
そして評価のときも、
「この子は資料の読み取りが甘いな」
「比較はできているけど、判断の根拠が弱いな」
といった形で、何ができていて、何がまだなのかを的確に捉えられるようになります。
(3)評価を「可視化」するための地図になる
この分類表は、言わば“思考を評価するための地図”です。問いがどこに位置するのか、何を見取りたいのか、どこに子どもの考えが表れているのかを整理するガイドになります。
この分類は、次章で紹介する「思考を問う50問」の基準としても使われます。
読者の方々が、
「こういう問いは“比較”の力を見ていたのか」
「これは“意思決定”の問いだったんだな」
と読み解けるよう、すべての問題にこの分類を付しています。