社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

369 身体性の活用

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〈作業活動の効果〉

長岡(1986)は、作業活動を「作業を伴う活動で、学習活動の一つである」と定義づけ、「社会科を言語主義から脱却させること、意図的に労働体験を行わせることをねらっている」と著しています。

そして、作業活動の効果として以下の5点を挙げています。

①     学習の単調さを防ぎ、学習への興味を増大させ、学習を主体化する。

②     理解を正確にし、深化する。

③     各種の能力を動員して、総合的に問題解決を図り、諸能力を増進する。

④     実践に訴え、個性的な生き方を養う。

⑤     協力する態度を養う。

 

 

社会科は、用語や言葉の説明が多いです。

言葉だけの表面的な理解になりがちです。

また、認知的な理解のみでは難しいこともあります。

そこで、動作化したり作業化したりして、知識をより実感として捉えさせることが必要となってきます。

 

「予想としての動作化」

「実感としての動作化」

を考えました。

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予想として動作化させる時には、子どもたちは動作化しながらその行為の意味を考ます。

子どもたちは動作化することで、「実際はどうなっているのだろう?」という知りたい気持ちが膨らみます。

それが学びに対するモチベーションとなり、参加度が高まります。

また、動作化することで、実際の動きを注意深く観察しようという意識が生まれます。

 

〈予想としての動作化〉

例えば、5年生の「水産業のさかんな地域」の学習で、カツオの一本釣りの行為を動作化させます。

子どもたちはえさをつけて、竿を海にたらし、かかれば足を踏ん張って引っ張る様子を動作化します。

大きな魚を釣るのでそれを想定した動作化です。

しかし、実際はえさもつけずにひょいひょいと、いとも簡単なようにカツオを短時間で大量に釣り上げる。

その様子を見て子どもたちは驚くでしょう。

子ども体の中に「どのようにしてとっているのだろう?」という問いが生まれます。

 

また、5年生の「雪国のくらし」の学習で、家の屋根の様子を手で表現させます。

子どもたちは雪が落ちやすいように、角度がついている屋根の様子を手で動作化します。

しかし実際は平らな屋根の家が多くなってきています。

子どもたちは意外性を感じ、雪国にある平らな屋根の秘密を追究したくなるのです。

 

 

〈実感としての動作化〉

 実際に獲得した知識に実感をもたせる時に動作化・作業化させることも有効です。

例えば、4年生「ごみのゆくえ」の学習で教室内で出るごみの量を知り、続いて市で1年間に出るごみの量を重さとして数字で確認します。

ある市では、一人あたりが出すごみの重さは1年間でおよそ300kg。

しかし、その重は実感として捉えられていません。

そこで、教室に用意をした10kgの砂袋を持たせます。

子どもにとって10kgは相当重い。

それの30倍のごみを一人が出している事実に子どもたちは驚く。

そうすることで、市で1年間に出るごみの量の多さを実感することができるのです。

 

また、5年生「米づくりのさかんな地域」の学習で、作業の機械化が進んできたことを学習します。

子どもたちは、「何となく便利になった」程度の認識です。

そこで、昔の田植えの仕方を理解させるために田植えの様子を動作化させます。

腰をかがめて何度も植える動作を繰り返します。

「これは大変だ…」

「時間もすごくかかるね…」

という声が子どもから聞こえます。

だからこそ、機械化が進んだことの便利さや効率のよさを実感することができます。

苦労を感じるからこそ工夫や努力についてより実感することができるのです。

 

さらに、これは「体験」の部類になりますが、6年生の室町文化の学習で、墨絵を体験させます。

体験後、雪舟の墨絵を細かく見ることで、いかに当時の文化や技術が優れていたのかを実感することができます。

 

このように、動作化や作業化をさせることで、認識だけでは拾えないような新しい気付きを得ることができるのです。



<参考文献>『社会科授業のユニバーサルデザイン』村田 辰明 著 2013

『テキストブック 授業のユニバーサルデザイン社会』
編著:村田辰明
著者:宗實直樹・佐藤正寿