社会のタネ

社会科を中心に、アートや旅の話などもあれこれと。

1093 作文を育てる土

 東井は、作文教育を農業に例えて、まずは土を作ることが大切だと述べる。土を丁寧に耕せば、作物自ら育つということである。「作文を育てる土」、すなわち「作文以前のもの」を用意し、それを育てる上で最も影響が大きいものが「教師の心構え」だと述べる。

 教師の心構えとして東井は、まず何よりも子どもを愛することからはじめ、それに終始することが重要だと述べる。しかし、「子どもを愛する」ということはどういうことだろうか。東井は、

子どもの生活を大じにしてやること、子どもの生活を、もっと美しいもの、もっとほんとうのもの、もっと力強いものに太らせてやることだ

 

と述べる。さらに、

 

子どもは、いろいろなことを思い、考え、しゃべり、行動する。その『思い』『考え』『おしゃべり』『行動』の一かけらをも粗末にせず、その中にやどっている、子どものいのちを愛おしみ、みがき、育てていく、それが子どもを愛することだ

 

と述べる。

 

 子どもの生活をみつめ、子どもの表現のすべてを受け止めて愛しむことができる教師の心構えがあってはじめて、子どもを理解するために効果的に機能するものが子どもたちの作文であると考えられる。

 

〈参考文献〉

東井義雄(1957)『村を育てる学力』明治図書